インビザラインコラム

第25回 インビザラインとホワイトライン(キレイライン)の違いはなんですか?

インビザラインに代表されるマウスピース矯正が世間の皆様に認知されたからだと思うのですが、医院に来られる患者様からマウスピース矯正で歯並びを治したいと言われる機会が多くなったように思います。インビザライン以外の様々な装置について質問を受けることもあるのですが、次々に新しいマウスピース矯正が出てくるので私の知らない装置について質問されることもしばしばです。インターネットでマウスピース矯正を検索すると、様々な種類のマウスピースが表示され、中には聞いたこともないようなマウスピース矯正もあり、すべてが良好な治療結果を得られるのならよいのですが、ひょっとしたらあまり治療成績の良くないものもあるのではないかと心配になります。

昨秋の日経トレンディー誌(No.497)にマウスピース矯正の特集が組まれていてマウスピース矯正の長所短所が書かれていました。一般の方向けの経済紙に矯正治療の特集が載るのだから、ある意味では矯正治療自体がごく普通の治療になってきたのだと思います。

参考までに日経トレンディー誌に掲載されていた表をお示しします。いくつかのマウスピース矯正が例として掲載されており、日経社がマウスピース矯正を代表していると判断した装置だと思うのですが、その中にも私が知らない装置があるくらいに多種の装置が存在します。通院間隔や料金にかなりの差がありますし、オンライン型なる表記もあり、今からマウスピース矯正で治療することを検討される方が読むと、逆に何を選べばよいのか分からなくなるのではないかと感じる特集になっていました。 

すべてのマウスピース矯正治療について説明するのは数が多すぎて無理なので、日常的に患者様や知り合いから質問されることが多い、キレイラインとホワイトラインについて今回のブログでは述べてみたいと思います。なぜキレイラインとホワイトラインに関する質問が多いのか疑問に思ったので調べてみたのですが、キレイラインとホワイトラインのインターネット広告が単純に目立つようですね。上記の装置を使って矯正治療を行っている方が多くて有名になったのではないような気がします。ちなみにキレイラインについては以前のブログ(https://kubota5888.com/column/3449/)でも書いておりますので、今回は2023年現在の状況で私の知っているまたは調べた情報を書いてみます。

 

まずはここ最近で話題になることが多いホワイトラインについてです。実は、この装置について何回か患者様から質問されるまで気にもしていなかったしそれほど注目されているとは思いもしなかったです。調べてみたところ、この装置はアライナーを3組使用毎に型採りを行い、状況に合わせてマウスピースを製作して治療を進める装置のようです。インビザラインでは最初にスキャンしてすべてのマウスピースを製作しますのでその点では差があります。患者様は来院毎に型採りしなければならないので大変かもしれませんが、来院時の状態に合わせてマウスピースを製作するので、都度適切な対応ができるという点ではマウスピースの不適合を防ぎながら治療を進めやすいというメリットがあります。ここ最近では来院毎に型採りしマウスピースを院内で製作する治療法も開発されており、状態に合わせてマウスピースを製作するメリットが注目されています。近い将来そのような治療法が主流になる可能性もあるのですが、その話はまた時期が来たら書こうと思います。とにかくホワイトラインの治療法はそのときの状況に合わせて治療方針をアレンジしやすいというメリットがあると思います。

ちなみにホワイトラインの型採りはiTeroというインビザライン社から販売されている3Dスキャナーを使用すると書かれています。ジェル状の型採り材料で歯型を採らなくてよいので苦しくないのもメリットと言えます。治療開始前に治療結果のシミュレーションを製作してそこを治療ゴールに設定するのですが、その治療結果のシミュレーションもインビザライン社が開発したソフトウェアを使用しています。このソフトウェアは非常に優秀で精密にシミュレーションを製作できますし視覚的にとても分かりやすいです。インビザライン同様に治療開始時には安心感があると思います。

インビザラインのようにシミュレーションソフトとマウスピースの治療計画を連動させることができないため、シミュレーション結果を忠実に再現した治療方針を立てることはできないはずです。そうなると実際に治療を担当するドクターの技術力の差が治療結果に相当に大きな影響を与えるはずです。すべての医院で同じ治療結果になるわけではないので医院を慎重に選ぶ必要がありそうです。

 

ホワイトラインの費用についてはキレイラインとほぼ同様の費用形態で、3組マウスピースを製作する度に費用が発生するシステムです。最後まで何組のマウスピースを使用するかは治療開始時には明示できないと思うので最終的にどの程度の費用になるか分かりませんし、安価なアライナー治療と謳っていますがアライナー数が増えると必ずしも安価ではないように思います。上下10組のマウスピースで約46万円。マウスピースごとの移動量の設定が装置ごとに異なるので10組でどの程度まで歯を移動させるのかは不明ですが、インビザラインはマウスピース1枚あたり0.25mmの移動が行われる計算で、仮に同じ移動量だと想定するとホワイトライン10組で移動できる移動量は2.5mm程度になります。2.5mmの移動で治療を完了できそうな軽度の凸凹が、10組のホワイトラインで改善できる歯並びということになります。矯正治療が46万円で完結するなら確かにほとんどのマウスピース矯正の価格設定よりも安価に思えるので不正咬合の程度によりますが、簡単に治る状態の方にとっては安価に治療できる可能性はありそうです。

出っ歯や強い凸凹がある場合には歯の移動量はもう少し大きくなるので10組以上のマウスピースが必要になります。私が通常行っているインビザライン治療では数十枚のマウスピースを使用して治療を行っています。ある程度以上の凸凹や歯並びの異常が見られる場合にはホワイトラインでもかなりのマウスピース数が必要になるはずです。歯並びの乱れがある程度以上の場合には料金が安いという訳ではなさそうなので、治療開始前に治療費の概算は確認される必要があると思います。

 

どのような歯並びなら対応できるのかも大切な要素です。ホワイトラインでは大臼歯(奥歯)を移動させることができず、小臼歯と前歯を移動して歯並びを改善します。奥歯の動きが制限されている分、基本的に歯を多めに削って調整するしかありません。歯を削るのはインビザラインやほかのマウスピース矯正でも必須です。ホワイトラインに特化した話ではないのですが、大臼歯を動かせないというのはホワイトラインやキレイラインなどのごく限られたマウスピース矯正に限定した話なので区別して考える必要があります。奥歯を動かせない分、歯の削除量を多くする必要があることは留意されたほうが良いです。歯はある程度までは削ってもエナメル質の厚みが十分に残れば大丈夫ですが、削らない方が良いことは間違いありません。削除量が多いときはご自身の歯並びに対する治療法として適していない可能性もあるのでご注意ください。

 

ホワイトラインやキレイラインの特徴として必要に応じてマウスピースを追加して治療を進めていくということがあります。要するに治療ゴールを設定してそこに到達したら治療が終了する訳ではなく、満足する状態まで歯が移動した段階で治療を終えるというシステムです。治療前に製作したシミュレーションと同じ歯並びになったら治療が終了する訳ではありません。治療途中で満足したら治療を終わりにすることができるメリットがありますが、場合によっては中途半端な治療になる可能性があります。治療後長期間に渡って問題が起こらない状態まで改善できているかを担当医に相談されるのが良いと思います。

 

最後に、どこの医院でもすべての装置を使用できるかというとそういう訳ではありません。マウスピース矯正の中ではインビザラインが現時点ではもっともメジャーな装置で、それでも対応できる医院は限られております。インビザライン社のホームページで公開されている情報をみればご近所で対応できるクリニックが見つかると思います。ほかのマウスピース矯正も同様で対応できる医院は限られています。最初から希望される装置があるのであれば、その装置を使用して治療を行っている医院を探して矯正相談に行かれる必要があります。

ちなみにホワイトワインを使用している医院のリストを確認すると、以前キレイラインのリストに載っていた医院とほぼ同じのように見えます。治療のシステムそのものも区別がつかないくらいそっくりで、そうなるとキレイラインとホワイトラインの違い自体が分かりかねるのですが、そこは大人の事情もあるのですかね・・・。

 

どんな治療にも当てはまる話ですが、同じ装置で治療したからといってどこの医院で治療しても結果が同じになるとは限りません。矯正治療をご検討の際には、ご自身の状態に合った治療方針をしっかりと説明してくれて、料金体系も明確、その上で希望される装置を使用して歯並びの治療をしてくれる医院で歯並びを治すことをお勧めします。

院長 久保田 衛

  • 医療法人プライムオルソ 理事長
  • 日本矯正歯科学会 認定医
  • インビザライン公認クリニカルスピーカー
  • カンボジアプティサストラ大学臨床教授

医療法人プライムオルソ くぼた矯正歯科クリニック

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