インビザラインコラム

第18回 インビザラインとキレイラインはどのような違いがあるのですか?

キレイラインというマウスピース型装置をもちいた矯正治療の広告がインターネットに掲載されているのをここ最近頻繁に目にします。

この装置は数年前から存在しており、開発にメインで関わった先生と顔見知りの関係ということもあり以前から動向を注目していたのですが、今年になって矯正治療の分野ではかなり話題になっているようです。

 

今回のブログでは、インビザラインとキレイラインの違いを比較してみたいと思います。

私はインビザライン社公認のFacultyという立場を頂いていることもあり完全に公平な立場ではありません。しかし、キレイラインに知り合いが関わっていることもあり、できるだけフラットな立場で一矯正医としての考えをお話します。

 

価格について

マウスピース矯正に興味がある方なら、多分一度はキレイラインの広告を目にされていると思いますが、まず目を引くのは価格の安さだと思います。実際のキレイラインのHPでも価格の安さを全面に打ち出しています。

矯正治療は自費診療で、一般的には総額100万円前後というのがインビザライン治療費の相場ではないかと思います。医院によってもちろん価格差があります。矯正歯科クリニックは一般歯科医院と比べると高額な傾向があり、料金の支払い方法も以前のブログ(https://kubota5888.com/column/2945/)で書いたように総額方式と都度支払い方式があります。一見するとかなり差があるように見えても最終的な総額ではインビザラインの治療費は検査料や調整料、マウスピース代などの諸々込みで100万円プラスマイナス数十万のレンジに収まるのが治療費の相場だと思います。

ちなみにインビザラインにはライトパッケージという歯の移動が比較的小さい症例用のプランが用意されており、通常のフルのインビザライン治療とくらべると価格は安く設定されています。ライトパッケージは40~70万円程度が相場というのが私の認識です。

 

一方でキレイラインは、初回2万円で2回目移行は4万円ということになっています。ネット広告のみでは分からなかったため、確認したところ基本的に2組のマウスピースで4万円ということでした。仮に上下15組程度のマウスピースで治療が完結する場合30万円程度の治療費となる計算で、マウスピース数が増えるに従いその都度支払いも増えることになります。

キレイラインの公式HPによるとマウスピースの他に上下顎に拡大装置の使用を推奨することがあり、その価格が上下で8万円となりこちらは別料金です。公式プログでは歯の形態修正(IPR)を行うことがあり、こちらも別料金で5回で15千円となっています。

そうなると諸々込の料金では40万円くらいになる計算です。キレイラインのHPに記載されているとおり、単純な治療の場合はインビザライン・ライトパッケージと比較すると価格はキレイラインの方が安いですね。ちなみに1枚のマウスピースで移動できる歯の移動距離はインビザラインの場合には最大で0.25mmと規定されていますが、キレイラインの場合にはそこまで厳密ではなく、インビザラインと比べると少し大きめに設定されているようです。そう考えると同じマウスピース数の場合、キレイラインの方が若干適応範囲はインビザラインより広いのかもしれません。いずれにしても簡単な症例であればインビザラインより価格は安いと言わざるを得ません。

 

治療が複雑になってくると、必要なマウスピースの数が増加します、これはインビザラインでもキレイラインでも同じです。仮に40組程度のマウスピース数になったとするとキレイラインの場合、HPの料金体系に従い計算すると約80万円プラス拡大症装置+IPR料金になるので90万数万円ということになり、インビザライン治療と比較してそれほど価格が安い訳ではありません。むしろインビザラインで治療を行う場合、40組のマウスピースで治療を終えることができるのは比較的治療がシンプルな患者様です。60~70組以上必要な方も珍しいことではありませんし、そう考えると治療が少し複雑になりある程度以上マウスピース数が必要になる方の場合にはキレイラインで治療すると逆に価格が高額になる可能性もあります。

上記を総合的に考えると、価格面では、キレイラインは比較的治療がシンプルでマウスピース数が少なくて済む患者さんに適していて、インビザライン・ライトパッケージで対応できそうな治療であれば価格はインビザラインよりも安いということになります。逆に治療が複雑になり、マウスピース数がある程度の枚数になる場合にはインビザラインで対応した方が価格的には安くなる可能性もあるので、最初にマウスピース数の見通しを確認するのは必須だと思います。

 

治療内容について

では、次に治療に関する内容について比較してみましょう。まずは適応範囲から検討したいと思います。

インビザラインは矯正医が通常の矯正治療用の装置として使用できる設定です。そのためインビザラインではかなり複雑な歯の移動を行うことが可能で、治療ノウハウの蓄積とシステムの更新に伴い現在では大部分の症例でワイヤーを用いる矯正治療と同等の治療を行うことができます。当然、フルのインビザライン治療ではすべての歯を移動する矯正治療を行うことができます。以前はマウスピース矯正では対応が難しいと言われていた小臼歯抜歯を伴う症例でも、インビザライン治療に習熟した歯科医なら治療を行うことが可能です。インビザラインのライトパッケージはマウスピース数が上下14組までの移動という制限がついているため、ライトパッケージの場合は対応できる症例は限られており、軽度の凸凹を改善したり空隙歯列の改善などごく限られた症例でしか使用することはできません。

 

では、キレイラインの適応範囲はでどうでしょうか?キレイラインの治療目標は上下前歯12本の歯並びを重点的に整えるとなっています。要するに前歯から犬歯の凸凹を改善することに重点をおいた治療です。奥歯の移動は最小限に留めるため出っ歯や受け口などの奥歯のズレを改善する必要のある治療は基本的に適応外です。また前歯の凸凹を改善する治療でも凸凹が強い場合にはキレイラインの適応できない場合があり、対応できない場合には治療をお断りすることがHPに書かれています。対応が難しい場合にはキレイラインで対応できないことを伝えられるわけですから、治らないものを無理矢理に治療するということはありませんので、そこは安心できる材料だと思います。

 

歯並びの凸凹は顎の骨の大きさに対して歯が大きすぎて並びきれないことが原因で起こります。要するにすべての歯が並ぶのに十分な隙間が足りないことが凸凹の原因ですので、インビザラインでは奥歯を後方に移動させて歯の排列スペースを作ったり、場合によっては歯を抜歯したスペースを利用して凸凹の改善を図ります。これらの方針は奥歯を前後的に移動させる必要があるため、キレイラインでは対応することが難しいと思います。そう考えるとキレイラインの主な適応症は比較的軽度の前歯の凸凹ということになり、それ以外の症例には不向きということになりそうです。ある意味、料金設定と症例の適応範囲のバランスは取れていると思います。

 

治療期間について

以前のブログ(https://kubota5888.com/column/2826/)に書きましたが、矯正治療に必要な治療期間は歯の移動量により差が生じます。それぞれの歯の移動距離が短ければ治療期間は短くなります。キレイラインは上記の通り、抜歯は行わず奥歯の移動も最小限ですので相対的に歯の移動量は小さいです。当然の結果として、キレイラインでの治療期間は短いはずです。ただし、これはキレイラインで治療すると早いということではありません。

本来歯の移動速度は患者様個々の持っている生体反応速度なので、装置によって歯の移動速度が変わるものではありません。仮にキレイラインと同じ移動をインビザラインで行えば治療期間については大差はないと私は考えております。キレイラインは歯の移動量が少ない結果治療期間が短くなり、インビザラインの場合は歯の移動量が大きい症例でも対応するため治療期間も長くなります。ですからキレイラインは治療期間が短いというのは半分本当ですが、実際のところは正確な表現ではないように感じます。

 

前歯のみの移動を行う場合でも、実際にはどこまで移動するかという点で治療期間にかなりの差が生じます。一般的に矯正治療では前歯の排列をできるだけ美しく見えるように並べるよう苦心することが多く、治療の仕上げの段階で思いのほか長期間を要するということが割と頻繁に起こります。インビザラインはマウスピースの数で料金の差が生じるシステムではないので、時間をかけても前歯をできるだけ美しく並べるように治療計画を立てます。結果として治療期間はその分長引きます。一方、キレイラインは治療が長引くとその分1回あたり4万円の費用が発生するためある程度の凸凹が取れた段階で治療を終えることになると思います。

治療期間の長短はどの程度の精度で歯並びを整えるかということに密接に関係するので、ある程度の凸凹をとることが治療の目的であれば治療期間を短くしてキレイラインによる治療で十分ですし、前歯をできるだけ理想的な状態にしたいとの希望があるのでならインビザラインの方が無難ではないでしょうか。これはあくまでも私がキレイラインについて調べてきた中での個人的な感想です。

 

治療を進める方について

キレイラインはマウスピースを2組使用するたびにスキャンを行い、その状態から次の2組のマウスピースでどのような歯の移動を行うか毎回治療計画を更新していきます。状況に応じた治療計画を立てることができ、2組先に生じる可能性があることのみを想定した治療計画にすれば良いので、治療計画を立てる上で考えるべき事項が比較的少なく治療行うドクターにとって安心感があります。

一方では、治療が完結するにはどの程度のマウスピース数が必要か明確な指標がありません。経験が少ないドクターだと正確に治療結果や治療期間を見通すのが難しい可能性があります。想定通りに歯が移動しないと想定したマウスピース数で収まらなくなり、治療前に聞いたマウスピース数の目安と最終的に必要になったマウスピース数には大きな差があるということが起こりうると思います。

 

インビザラインは治療開始前にすべての歯の移動について3次元シミュレーションによる治療計画を立てた上で治療を開始します。最初にすべての治療過程を見通せる経験と知識が必要ですのでドクターには一定の負荷が掛かりますが、正確に診断できる医院で説明を受ければ治療開始前の時点で治療後の状態を確認していただくことが可能で、治療に必要なマウスピースの数も提示されます。マウスピース矯正に限らず矯正治療は必ずしも治療計画通りに歯の移動が起こる訳ではないため、マウスピース数は想定よりも多くなりますし、治療後の状態も治療計画と全く同じになる訳ではありません。それでもインビザラインの場合では治療後のイメージを歯科医師と患者様が共有して治療をすすめることができ、おおよその治療期間を知ることができます。治療計画の説明を受けた段階で、患者様の希望に応じて修正を加えることも可能ですので、より精密な治療を行う事ができます。

 

上記のインビザラインとキレイラインの違いを考慮すると、どちらの治療が合っているかは患者様のニーズによって異なるように思います。

インビザラインは、前歯の凸凹を取るだけでなく顔貌のバランスも考慮して総合的に歯の移動を行い、できるだけ理想的な歯並びになることを希望される方に必要な選択肢です。一方キレイラインは短期間で前歯の凸凹をある程度改善することを希望していて、横顔の大きな変化は求めないような方に適した装置だと思います。

どちらの治療が正しくてどちらかが間違っているということではなく、患者様本人が矯正治療に何を求めるかの違いということになります。

私自身がキレイラインで治療を行ったことがないため、どの程度の凸凹までキレイラインで対応できるか判断が難しいということもありますが、患者様本人もご自身がどのような歯並びになりたいの要望が明確でないということも多々あります。矯正治療は基本的に一生に一度の治療です。どのように治療ゴールを設定するかは治療後の人生を左右する非常に大切なファクターです。歯科医師によってもどのような状態を目指して治療を行うかはかなり大きな差があります。矯正治療をご希望の際には、まずは何人かの先生の話を聞いた上で最終的にどこの医院で治療をされるか決定されるのが良いと思います。

 

院長 久保田 衛

  • 医療法人プライムオルソ 理事長
  • 日本矯正歯科学会 認定医
  • インビザライン公認クリニカルスピーカー
  • カンボジアプティサストラ大学臨床教授

医療法人プライムオルソ くぼた矯正歯科クリニック

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