インビザラインコラム

第13回 矯正の治療期間を短くする方法はありますか?

矯正治療は長期間にわたる治療が必要です。治療期間は患者様それぞれの歯並びの状態によって異なり、半年程度で終わる方もいらっしゃれば、まれに4年以上の期間を要することもあります。ですから治療期間の平均値にはあまり意味はないのですが、通常、永久歯の矯正治療では2〜3年くらいの期間が必要とされています。2、3年は決して短い期間ではないですし、できるだけその期間を短くしたいと考えるのは当然のことだと思います。

今回のブログでは、矯正の治療期間を左右する要素と、それぞれの要素に対して治療期間を早めるにはどのようなアプローチが考えられるかを書いてみたいと思います。

矯正治療の期間を左右する主な要素として以下のものが考えられます。

歯の移動量

矯正治療ではどの歯をどこの位置に移動するかを決め(この過程を治療ゴールの設定といいます)、全ての歯の移動が完了した段階で矯正治療が終わることになります。各々の歯によって移動量は異なりますが、長い距離を移動させる歯がある場合にはその分治療期間が長くなります。歯の移動量を短くすれば治療期間も相対的に短くなるので、治療ゴールの設定の仕方により治療期間を短くすることが可能です。

例えば、出っ歯の治療では、上顎前歯を内側に移動することになりますが、内側に移動する量を少なく設定すれば歯の移動量は小さくなり、その結果、治療期間が短縮されることになります。しかし、治療ゴールを変更して上顎前歯の移動量を小さくすると、その分、出っ歯が残ることになります。ですから治療ゴールを変更して治療期間を短くすることは、期間を短縮する方法として最善ではないことが多いです。

歯の移動順序

治療ゴールを設定し、各々の歯を移動する場合に1本ずつ歯を移動するのか、それとも同時に何本もの歯を移動して治療を進めるのかで治療期間は大きく異なります。すべての歯を同時に移動して治療を進めることが可能であれば、治療期間を大きく短縮できるはずです。しかし、歯の移動は基本的な物理の作用反作用の法則に基づいて移動が進むため、現実的にはすべての歯を同時に移動させることは難しいです。治療計画を立てる段階で矯正医はどの順番でどの方向に歯を移動させるか検討します。この治療計画は矯正医によって大きく異なる可能性があり、そういう点では矯正医の治療計画を立てる能力によって治療期間は大きく異なると多います。

歯の移動速度

矯正治療で歯を移動させる場合、歯の移動速度が早ければ早いほど治療期間が短くなります。歯の移動速度は患者様の年齢、骨密度、栄養状態、血流など様々な因子で変化しますが、基本的には患者様個々の生理的な性質です。ですから矯正医が生理的に移動速度を変化させるというのは非現実的だと思います。歯の移動速度を上げる様々な方法が以前から研究されており、移動に適した力の強さ、継続的な力と断続的な力での相違、歯に振動を加える方法など、様々な議論がなされています。しかし矯正学的な力の加え方を変化させることでは、歯の移動速度を劇的に変化させることは難しいと考えられています。

ここ最近、歯の移動速度を上げる効果的な方法としてフォトバイオモジュレーションという概念を用いた方法が脚光を浴びています。この方法では近赤外線を歯茎に当てることで骨代謝に関わる細胞の活性を高め、その結果、歯の移動速度が速くなります。このフォトバイオモジュレーションは骨折などの治療において以前から使用されていた技術なのですが、矯正の臨床ではオーソパルスという装置を用いて歯茎に近赤外線を当てることで、例えばインビザラインの場合では通常7日毎に交換するマウスピースを最短で3日毎に交換できるようになります(オーソパルスを用いた際の歯の移動速度の変化にも個人差があります)。ちなみに当院でもオーソパルスは使用を希望する方には使って頂いており、治療期間の短縮を図っております。

オーソパルスについてはまた日を改めてブログを書きたいと思います

抜歯と非抜歯

上記1で書いた治療ゴールに近い事柄ですが、矯正治療では抜歯と非抜歯という大きく分けて2つの方針が考えられます。抜歯を行うかどうかで歯の移動量が大きく変わるため、歯を抜くかどうかは矯正の治療期間に大きく関わる要因の1つです。

矯正用インプラントを用いるのが一般的になりつつありますので、最近では歯並びの治療を行う際に、抜歯と非抜歯で前歯の位置はほぼ同じ場所に歯を並べることができるようになってきました。

実際には奥歯の噛み合わせは異なった状態になるので、治療期間が短い方を単純に選択すれば良い訳ではありませんが、どちらのプランを選択するかによってかなり治療期間に差が出ます。一般的には非抜歯の方が治療期間は短い傾向がありますので、治療期間を気にされる場合には、よく矯正医と抜歯について話し合われることをお勧めします。

年齢

歯の移動速度は骨代謝に関わる細胞の活性が高いほど速くなります。一般的に成人になり年齢を重ねるに従い細胞の活性は少しずつ低くなっていき歯の移動速度も遅くなっていきます。ただ、実際の細胞の活性はかなり個人差があるため、何歳までに治療をするのが理想的かは判断が非常に難しいと思います。

矯正治療自体は、歯茎の骨が健康である限りは何歳になっても受けることが可能な治療です。もちろん早いうちに治療を受けるのが治療期間を考慮すると理想的ですが、私個人的な気持ちとしては歯並びが気になるのであれば年齢は気にせずに、まずは矯正歯科を受診することをお勧めします。

来院頻度 

実はこれが矯正治療の期間を左右する最大の要因なのではないかと個人的には考えております。通常、ワイヤーの矯正治療では月に1回来院し装置を調整するという過程を繰り返します。月に1回というのは歯に力を加えて歯の移動に必要な期間が大体1ヶ月程度必要とされているため、一般的に月に1回程度来院していただくことになります。学術的には1回の装置の調整で歯の移動が終了するには3週間程度との研究結果が多いため、本来ならば3週毎に来院されるのが最も理想的で、仮に3週毎にきっちり診療を受けられると月一回の来院と比較して25%程度治療期間を短縮することが可能です。

また、患者様によっては忙しいこともあり月1回正確に来院されず、不定期に来院される方もちらほらと見受けられます。理論的には装置を調整して3週間以降の期間に歯は移動していません。来院されなかった期間は丸々治療期間を無駄に過ごしたことになるので注意が必要です。

また、矯正治療では患者様ご自身でゴムをかけて頂かなければならない場合があります(顎間ゴムといいます)。この顎間ゴムは掛けても掛けなくても良いという訳ではありません。ゴムを掛ける事で理想的な歯の移動が起こりますが、ゴムを使用していないと想定外の移動が起こり余計に治療期間の延長につながります。矯正治療期間中は担当されている矯正医としっかりコミュニケーションを取り、協力して治療を進められるのが期間を短縮する最善の方法だと思います。

 

上記のように様々な要素が矯正の治療期間に関わっており、矯正医の知識と技術によりある程度の差が生じるのは事実です。しかし、実際の臨床においては患者様の治療に対する姿勢も非常に重要な要素ですので矯正医の指示に従って医院のスタッフの方も含めて良好な関係で治療に臨んでいただけると我々矯正医としてもありがたいです。

ちなみに歯の移動に悪影響を及ぼすと知られていることが1つあります。喫煙です。

喫煙は歯槽骨の血流を阻害しますので、歯の移動を著しく妨げると言われています。矯正歯科医によっては喫煙している患者様の治療はしないと言う方もいたりします。

私はそこまで厳しくはないですが、喫煙は矯正治療に悪影響を及ぼすだけでなく歯周病や心疾患、がんなど全身的な疾患の原因にもなります。止められるなら治療期間中だけでも止めてほしいというのが本音です。矯正治療を機にタバコをやめて、綺麗な歯並びになると同時に全身的に健康になってみるというのはいかがでしょうか。

院長 久保田 衛

  • 医療法人プライムオルソ 理事長
  • 日本矯正歯科学会 認定医
  • インビザライン公認クリニカルスピーカー
  • カンボジアプティサストラ大学臨床教授

医療法人プライムオルソ くぼた矯正歯科クリニック

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