インビザラインコラム

第12回 歯を抜かないと歯並びは治せないのですか?

矯正治療を始める際に、最も不安に思うことの1つとして歯を抜かないと治療はできないのかということがあると思います。私の医院に歯並びの相談に来られた方でも、多くの方から“歯を抜かないと治せませんか?”と質問されます。
矯正治療では、凸凹の歯並びのスペース不足を解消したり出っ歯を改善するために、しばしば抜歯して治療を進めることがあります。しかし歯を抜くことは多少なりとも誰でも抵抗があるのではないでしょうか。むしろ抜かずに済むのであれば歯は抜きたくないと言うのが本音だと思います。

なぜ歯を抜かなければならないのでしょうか

矯正治療で歯を抜かなければならなくなる最大の要因は、顎と歯の大きさのバランスが合わないために顎に歯が並びきらないということです。顎の骨の大きさに見合ったサイズの歯が生えれば歯はキレイに並んだ状態で生え替わることが多いのですが、顎に対して大きすぎる歯が生えてくることがあります。欧米の白人と比べるとアジア系の人は顎の大きさに対して歯が大きすぎることが多く、歯が並ぶスペースが不足することから、歯並びが凸凹になる人が多いと言われています。物理的に顎の大きさが十分でない場合には並びきらないので歯を間引いてスペースを作り、そのスペースに歯をばらして並べることで歯並びの凸凹を改善するという処置が必要になるわけです。

 

出っ歯の場合にも抜歯したスペースを用いて前突している前歯を内側に移動させることがあります。出っ歯の問題は顎の骨の大きさだけでなく上下顎の前後的な位置関係の問題も絡んでくるので単に凸凹の歯並びを改善するより考え方は複雑になります。
上下顎の前後的な位置関係が大きくずれていない場合には、歯を抜かずに対応する方法や逆に上下左右で1本ずつ(合計4本)抜歯して出っ歯を治す方法があり、上下の位置関係が大きくずれていると上顎だけ左右1本ずつ抜歯して治療を行うことがあります。前方に出ている歯を内側に移動するためには、移動させるためのスペースが必要で、そのスペースを作るために歯を抜くという処置が必要になります。

 

歯を抜くか抜かないかの線引きはどうやって決定するのでしょうか

今回は凸凹の歯並びを改善する場合を例に説明したいと思います。
凸凹を改善するには不足しているスペースをどうやって補うかを考えることになります。スペースの不足が著しい場合には歯を抜かずに治療するのは難しいのですが、スペースの不足が重度でなければ歯を抜かずに歯並びを改善することも可能です。

歯を抜かずに大きすぎる歯を小さくする方法

歯は隣り合った歯と基本的には点接触しており、接触している箇所をほんの少し削るだけで歯の大きさを小さくして歯と歯の間に隙間を作ることが可能です。この方法を歯の形態修正といいます。1箇所で削れる歯の量はごく僅かですが、削る箇所を増やせば合計で3〜4ミリ程度のスペースを確保することが出来ます。そのスペースを歯並びの凸凹になっている場所に集めることが出来れば歯を抜かなくても凸凹の改善が可能です。ただ、この方法ではごく軽度の凸凹しか改善することが出来ません。

形態修正よりも更にスペース不足を解消するための方法①

歯が並んでいる部分を歯槽骨といいますが、歯槽骨には頬舌方向の厚みがあります。その厚みの範囲内であれば歯をある程度外側に並べたり内側に移動したりすることが可能です。歯を最初の歯並びの位置より外側に並べると歯が並ぶスペース自体が長くなるので、凸凹を改善するためのスペースを作ることができ、この方法を歯列の拡大と言います。歯列を拡大できる範囲は歯槽骨の厚みによる個人差も大きく、この方法で解消出来るスペース不足もせいぜい3〜4ミリ程度ですが、先に挙げた形態修正と合わせて行うことでかなりのスペース不足を補える可能性が出てきます。

 

形態修正よりも更にスペース不足を解消するための方法②

形態修正+歯列の拡大を行ってもなおスペースが不足する場合には、奥歯を後方に移動させることが出来れば、前方部の歯並びのスペース不足を解消することが可能です。この方法は奥歯の噛み合わせにズレがある場合には特に有効です。この方法を本来は最初に行うべきですが、奥歯を後方に移動させるというのは矯正治療の中では難易度が高い移動で歯科医師の技術と経験に左右される治療になります。

 

これらの方法を実際には患者様の歯並びの状態に合わせて選択することで、最近の矯正治療ではかなりの症例で歯を抜かずに治療ができるようになってきました。
特にインビザラインは奥歯を後方に移動するのが得意な装置といわれており、簡単ではありませんが、患者様と歯科医師およびスタッフが協力することで歯を抜かない治療を選択できる可能性が高まってきました。
ワイヤー単独の治療では歯を抜かざるを得なかったような状態でも、最近では歯を抜かずに治療を行うことが多くなっているので、歯を抜く必要があるのかは矯正医に一度相談されて判断するのが良いと思います。
ただし、根本的に顎の大きさが不足している場合には現在でも抜歯して治療を進めます。矯正治療後の安定性などを考えると歯を抜かずに治療を行うことだけに注力するのも意味がないというのが矯正医の一般的な考え方です。

当院では「歯を抜きたくない!」という患者様のご要望に、できる限りお応えするようにしております。ご自身の治療方針について相談されたい場合には、治療後のシミュレーションをお見せして説明いたしますのでお気軽に医院にお越しください。

院長 久保田 衛

  • 医療法人プライムオルソ 理事長
  • 日本矯正歯科学会 認定医
  • インビザライン公認クリニカルスピーカー
  • カンボジアプティサストラ大学臨床教授

医療法人プライムオルソ くぼた矯正歯科クリニック

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