お知らせ

第29回 「インビザライン・ファースト」で始める子どもの矯正治療

「「子どもの歯並びが気になっています。いつ頃から矯正を始めたらいいですか?」

「マウスピースでも子どもの矯正ってできるんですか?」

保護者の方からこのようなご相談を受けることが、年々増えてきました。

 

矯正治療をいつから開始すれば良いのかは不正咬合の状態によっても異なりますし矯正歯科医の間でも考え方に大きな差があるのですが、小学校低学年〜中学年頃の混合歯列期から始める矯正(第一期治療)には、骨格や歯並びの土台作りとしての大きな意味があります。

そしてその第一期治療において、最近とても注目されているのが「インビザライン・ファースト」という取り外しが可能なマウスピース型矯正治療です。

 

 

■ 子どもの矯正治療の意義とは?

子どもの矯正治療は、「大人になる前に歯をきれいに並べる」ためのものと思われがちですが、実は本質はそこにはありません。

成長期にしかできないことを、成長期のうちにしておく、これ、第一期治療の最大の目的です。

第一期治療の主な目的は以下のようなものが挙げられます。

  • 顎の大きさ・位置関係の改善
  • 上下前歯の排列と被蓋関係の改善
  • 臼歯部のかみ合わせの正常化
  • 永久歯の萌出スペースの確保
  • 舌や口唇のクセの修正(MFT
  • 将来的な本格矯正の難易度軽減

 

たとえば、顎の大きさやバランス、上下の咬み合わせの位置関係は、骨の成長が活発な時期にしか大きく改善できない領域です。歯の位置だけでなく、顎骨そのものの発育をコントロールできるのはだけなので今しか対応ができないということも少なくありません。

 

上顎が小さくて歯が並ぶスペースが足りない、下顎の成長が不十分で出っ歯気味になっている、反対咬合(受け口)が見られる、口呼吸や舌癖が影響して歯列や顎の成長に偏りがあるといったケースでは、早期に介入することで、将来的な本格矯正の負担を減らすことが可能になります。

 

成長を利用して必要な処置を行える時期はそれほど長くありません。

だからこそ、そのタイミングを適切に捉えて、必要なサポートをしてあげることがとても大切なのです。

 

 

第一期治療のあとには「第二期治療」が必要です

ただし、第一期治療だけで矯正治療がすべて完了するわけではないということも、あらかじめご理解いただきたい大切なポイントです。

第一期治療では、顎の成長誘導や歯の萌出環境の改善など、「土台作り」を行いますが、その後に永久歯がすべて生え揃う時期(中学生〜高校以降)には、歯列全体の最終的な仕上げを行う「第二期治療」が基本的に必要になります。

この第二期治療では、

  • すべての永久歯の審美的な排列
  • 緊密な咬合の確立
  • 歯列の左右対称性や正中の一致

 

といった最終的な仕上げを行い、機能的で美しい歯並びを整えていきます。

つまり、第一期治療と第二期治療をセットで行うことで、美しく機能的でバランスが取れた、理想的な咬合状態を無理なく獲得できるというわけです。

 

 

■ インビザライン・ファーストとは?

 

「インビザライン・ファースト」は、混合歯列期に使用する、子ども専用のインビザライン治療プログラムです。永久歯と乳歯が混在しているこの時期に、顎の成長を促す、歯の生えるスペースを確保する、将来萌出する永久歯が並ぶためのスペースを確保するといった目的で治療を行い、将来の本格矯正をスムーズに進めるための準備をしていきます。基本的には矯正治療の第一期治療にあたる部分で用いる装置で、最終的に永久歯を正常咬合に近い状態に整える第二期治療とセットで行う治療です。

 

 

■ インビザライン・ファーストの特徴とメリット

◎ 目立たず、快適に矯正ができる

透明なマウスピースなので、見た目のストレスが非常に少ないのが特徴です。

小学校の中学年くらいになると、見た目のことが気になってワイヤーなどのやや目立つ矯正装置を嫌がるお子さんもいますが、インビザライン・ファーストなら装着していてもほとんど目立ちません。

 

◎ 痛みの軽減

矯正治療では歯の移動に伴い通常が痛みが伴います。装置によって痛みは異なりますが、インビザライン・ファーストを含めマウスピース矯正は従来の矯正治療と比較して弱い力で歯を移動するために痛みが弱く使いストレスの小さい装置です。

 

◎ 食事・歯磨きのストレスが少ない

装置は自分で取り外しができるため、いつも通りに歯磨きができ、むし歯リスクを抑えることができます。食べ物の制限もほとんどありません。

 

◎ 顎の成長を活かした拡大が可能に

インビザライン・ファーストには下顎の成長を誘導することで上顎前突を改善するオプションがあり、出っ歯の原因になる上下顎の位置関係を改善することができます。また、2025年には「インビザライン拡大プレート」の提供も始まり、上顎の側方拡大(横幅を広げる)に特化したアプローチも可能になり、将来小臼歯抜歯が必要な状態をできるだけ非抜歯で対応できるようにすることができるようになりました。

 

◎ 治療の見える化ができる

インビザラインでは、治療前に3Dシミュレーションを作成し、歯の動きや変化を可視化できます。患者本人や保護者の方にもわかりやすく、モチベーションの維持にもつながります。

 

 

■ 他の装置との違い

・ マルチブラケット装置(ワイヤー治療)との比較

マルチブラケット装置は、歯の表面に金属やセラミックのブラケットを貼り、ワイヤーで歯を動かす方法です。

【メリット】装着忘れがなく患者の協力度が低くても治療できる。状態の変化に応じて治療方針の修正がしやすい。

【デメリット】目立つ、歯磨きがしにくい、違和感や痛みが強め。雑に扱うと装置が脱落したり壊れやすい。

 

インビザライン・ファーストでは、より審美性が高く、痛みも少なく、取り外し可能な点が大きな違いです。

 

 

・ 拡大床(プレート装置)との比較

取り外し式で顎を広げる「拡大床」は、長年使われてきた小児矯正装置です。

【メリット】骨格的な拡大が可能、装置が目立ちにくい。

【デメリット】ネジの管理が必要で壊れやすい、装着時間の管理が難しい、歯の動きのコントロールは不十分なことも。違和感が非常に強く、痛みも強い。

 

インビザライン・ファーストでは、拡大と歯列の整列を同時にデジタル計画し、治療の精度や効率が高められています。また、専用アプリを用いることで歯の移動状態を確認することもでき、保護者側の負担も軽減されます。

 

 

■ 実際の治療例

ここで前歯のデコボコで出っ歯の9歳の男の子の治療前後の写真とインビザライン・ファーストの治療計画の動画をご覧いただきます。

この患者様は上の歯が出ていることを主訴として、かかりつけ歯科医院からのご紹介で来院されました。

治療は、インビザライン・ファーストを用いて前歯の突出感および凸凹の改善を行いました。 

患者様の協力もあり、9か月間の治療で良好に治療することができました。

今後は全身成長および永久歯がすべて萌出するのを待って、第二期治療(仕上げの治療)を行っていく予定です。

 

 

■ まとめ:子どものうちに、自然な笑顔をつくる準備を

子どもの矯正治療は、「早ければ早いほど良い」というわけではありませんが、始めるべきタイミングを逃さないことが非常に重要です。

 

インビザライン・ファーストは、見た目や快適さ、治療の計画性において、これまでの小児矯正とは大きく異なるアプローチが可能です。

お子さんの歯並びや口元が気になる方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

理事長 久保田 衛

  • 医療法人プライムオルソ 理事長
  • 日本矯正歯科学会 認定医
  • インビザライン公認クリニカルスピーカー
  • カンボジアプティサストラ大学臨床教授

医療法人プライムオルソ くぼた矯正歯科クリニック

〒983-0039 仙台市宮城野区新田東2-14-6

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