インビザラインコラム

第6回 インビザラインの治療期間はワイヤーの矯正と比べると長いの?

矯正治療で目立たずにキレイな歯並びになるというのはとても素晴らしいことですが、矯正治療を行う場合に患者様が気にすることとして治療期間の問題があります。

いくらインビザラインが目立たない装置だからといって、治療期間がどれだけ長くても良いというわけではありません。できるだけ早く歯並びがキレイになることは患者さんの大きな要望の一つでもありますし、矯正医は如何にロスを少なくして治療期間を短縮するかを常に考えています。

まずは治療期間を説明する前に、歯の移動速度について説明しようと思います。
矯正治療では何かしらの方法で歯に力を加えることで歯を移動させ、目的の位置まですべての歯を移動させると矯正治療が終了します。ですから、歯の移動する速さが早ければ早いほど矯正治療の期間は短くなります。

歯の移動する速度は、年齢・骨密度・骨の吸収や骨を作る細胞の活性など様々な要素で異なってくるのですが、これらの要素は矯正装置の種類が変わったからと言って異なるわけではなく、患者様ご自身の身体的な特性といってよい類の要素です。
細胞の活性を高めることで歯の移動速度を高めるという方法があるのですが、そちらの方法につきましては別の機会に説明したいと思います。

強い力を歯に加えると一時的に歯の移動速度が速くなる場合もあるのですが、無理に大きな力を加えると歯の根っこが吸収され、歯茎の骨の性質が変性することで動きが逆に遅くなることもあります。長年の様々な研究から、矯正治療で歯を移動させるための最適な力の強さはある程度科学的にも証明されているため、矯正医はその力の範囲内で歯に力を加えるようにして治療を行っています。加える力の大きさが同じであればもちろんそれぞれの歯の移動速度は同じなので、歯の移動速度という観点ではワイヤーによる矯正治療もインビザラインによる治療も大きな違いはないと私は考えています。

それでは、矯正治療はどういう方法でも同じ治療期間になるのでしょうか?
これについては明確に治療期間に差が出る要素が存在します。

矯正治療では上下顎のすべての歯を目的の位置まで移動させる必要があります。1本1本の歯の移動する速さは同じでも、同時にたくさんの歯を移動することが出来ればすべての移動に要する時間は短くなり、仮に1本ずつ歯を移動させると治療期間は非常に長期間に渡ることになります。そのため、治療期間を短縮させるためにはどの順番で何本の歯を移動させるかという治療計画が非常に重要になります。出来るだけ多くの歯を治療前の位置から目的の位置まで一直線に移動させるのが治療を短くする最善の方法ということになります。

インビザラインでは通常すべての歯を同時に移動させることは致しません。歯を移動させるためには移動する歯を支えるための支点(固定限)が必要で、支点が失われると予定通りに歯を移動させることができなくなるからです。そのため矯正医は自身の経験と知識をフル活用し、固定限を計算しつつできるだけ多くの歯を同時に無理なく移動できるプランを作製します。この移動プランを製作する過程はドクターの経験と技量によってかなりの差が生じます。場合によってはインビザラインの方がワイヤーの矯正よりも短期で歯の移動を終えることができる可能性もありますが、逆に欲張って多くの歯を同時に移動させようとしたために歯がうまく移動できず逆に治療期間が長くなってしまうこともあり、我々矯正医としては歯の移動計画の立案には非常に神経を使います。

インビザライン治療では歯の移動を意図的に分けて行う治療計画を立てるため、治療が長くなりがちです、一方、ワイヤー矯正ではワイヤーを介してすべての歯が繋がっているため、どこか一部分だけ動かさないというのは非現実的で困難です。ワイヤー矯正では、良くも悪くもすべての歯を同時に動かさざるを得ません。正確に治療ゴールを達成するのはかなりの技術が必要なのですが、すべての歯を同時に移動させるという観点では、ワイヤーの方がやや治療期間が短くなる傾向があります。

また、歯の移動経路の観点から考えると、無駄なく一直線に目的の位置に移動するのが理想です。ワイヤーでは、歯が様々な方向に同時に移動してしまうため、現実的には一直線に目的の位置に移動することはあり得ません。インビザラインでは、同時に歯を移動することを諦める代わりにできるだけ一直線に近い経路で移動を行えるため、こちらの要素ではインビザラインの方が治療を短縮できるということになります。

インビザラインとワイヤーの比較

私に限らず、一般的に矯正は治療期間を短縮させることよりも、理想的な歯並びにすることを優先することが多いと思います。
結論としては、インビザラインで治療を行う場合には、無理な移動は避けて確実に移動できる可能性が高い治療計画を立てます。そのため、ワイヤー矯正よりも治療期間が長くなることが多いと考えます。データを取って比較していないので、科学的な根拠はありませんが。

長々と書きましたが結局のところ、治療期間はドクターの経験と知識に左右されるのでしょう。

 

仙台市で矯正歯科をお考えの方は『くぼた矯正歯科クリニック』へ

院長 久保田 衛

  • 医療法人プライムオルソ 理事長
  • 日本矯正歯科学会 認定医
  • インビザライン公認クリニカルスピーカー
  • カンボジアプティサストラ大学臨床教授

医療法人プライムオルソ くぼた矯正歯科クリニック

〒983-0039 仙台市宮城野区新田東2-14-6

022-395-5888