インビザラインコラム

第4回 インビザラインで治療できない歯並びってありますか?

 

 

矯正相談に来られた患者様にインビザラインでも対応できるとお話しすると「自分はインビザラインでは治療できないと思っていた」とたまに言われることがあります。
かかりつけの一般歯科の先生に歯並びの相談をしたらインビザラインでは治らないんじゃないかと言われたたとか、場合によっては矯正歯科に相談に行ったらインビザラインは簡単な治療しかできないと言われたとか、インターネットからの情報で自分には向かないと思っていたとか、誤解にいたるにはいろんなパターンがあります。

では実際のところ、インビザラインの治療では治せる歯並びの状態と、対応できない状態があるのでしょうか?

答えは“Yes”です。これは私の意見なのですべての矯正医が同じ意見かどうかは分かりませんが、私の経験から判断するとインビザラインには治療しやすい歯並びと、対応が難しい歯並びがあります。
インビザラインは日々新しいノウハウが研究開発されているため、何年かしたら私の意見も変わるかもしれません。しかし現時点では、インビザラインで治療するのは不可能ではないにしても、圧倒的にワイヤー矯正で治療をした方が治療結果も良いし期間も短くできる歯並びの状態が存在すると思います。

どういう状態がインビザラインで対応が難しいかをまとめてみたいと思います。

(1)骨格系に問題があることで起こっている症状

上顎前突(出っ歯)

下顎前突(受け口)

出っ歯受け口のような顔の形に関する問題は、上顎と下顎の位置に不調和があることが原因で起こっています。顔面の左右非対称も同様です。ある程度のズレであれば歯の向きを調整することで顎のズレをカモフラージュしてキレイな歯並びに整えることは可能ですが、上下顎の位置関係に大きなズレがあると歯並びを整えるだけの治療では対応ができなくなります。

上下顎の位置関係の不調和が大きい場合、外科矯正といって手術と矯正治療をセットにして行う治療があります。この治療は健康保険が適応になるのですが、保険適応にするためにはワイヤー矯正で対応する必要があるため、インビザラインで治療を行うことはできません。矯正も手術も健康保険が適応にならなくても良い方の場合にはインビザラインで対応できる可能性もありますが、料金が高額になることを考慮するとあまり現実的ではありません。

出っ歯や受け口の患者様すべてが外科矯正になる訳ではありません。不調和の程度が軽度から中等度程度の方であれば、手術は行わず、通常は歯並びを整えることで顔の形の不調和を目立たなくなるように治療を進めます。この場合にはインビザラインでも治療を行うことができます。

(2)抜歯を伴う矯正治療

矯正治療では、スペース不足の解消や口元の突出感の改善を目的として小臼歯を抜歯して治療を進めることがしばしばあります。インビザラインでも小臼歯抜歯を伴う矯正治療は可能です。
ただ、抜歯を伴う治療の場合には一般的にそれぞれの歯の移動量が大きくなる傾向があります。一本あたりの歯の移動量が大きくなるとインビザラインでは治療期間がかかる上、歯が倒れ込むなどの予定外の移動が起こることがあり注意が必要です。

抜歯して口元の突出感を改善する場合は、前歯の移動量が特に大きくなります。インビザラインで治療を行うと、前歯が想定していた治療目標よりも内側に倒れ込んだり咬み合わせが深くなるという問題が起こりやすく注意が必要です。治療開始前の状況によってインビザラインで対応しにくい場合もあると思います。

同じ小臼歯抜歯の治療でも、口元には大きな問題がなく歯並びの凸凹が強い方の場合には、それぞれの歯の移動量は小さくなる傾向がありインビザラインでも十分に治療が可能です。

(3)埋伏歯やマウスピースで歯を覆い被せることができない場合

インビザラインはマウスピースから発生する力で歯を移動させる治療です。ですからマウスピースが歯を覆っていない場合には歯を移動させることができません。

骨の中から歯が生えてくる途中で歯の萌出が止まってしまった埋伏歯は、インビザラインでは萌出させることができません。完全に埋伏している場合だけでなく、何らかの問題で歯が十分に萌出しておらず垂直的な歯の長さが極端に短い場合もインビザラインでの治療は難しいです。

上記の症状は矯正治療を受診される患者さんのうちで大きなウエイトを占めているわけではありません。最近ではインビザラインで対応できる適応範囲はどんどん広がっています。最も大切なことは治療を受けた患者様が満足していただける治療結果を達成することができるのかということです。とうてい不可能な治療を無理矢理インビザラインで治療しても良い結果にはなりませんし、治療前にインビザラインによる治療で改善できることと対応が難しいことを理解して頂いた上で治療を開始する必要があります。
仮にインビザラインでは改善が望めない症状でも、患者は全く問題になさらない場合もあります。インビザラインに限らず、矯正治療を受ける場合には、しっかりと治療に付いて理解してから治療を開始しましょう。

 

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院長 久保田 衛

  • 医療法人プライムオルソ 理事長
  • 日本矯正歯科学会 認定医
  • インビザライン公認クリニカルスピーカー
  • カンボジアプティサストラ大学臨床教授

医療法人プライムオルソ くぼた矯正歯科クリニック

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