インビザラインコラム

第3回 インビザラインで失敗したとの話をネットで目にしますが…

インビザラインに限らず矯正治療で失敗したとの話がネット上にあふれています。一概に失敗と言っても矯正治療が上手く進まなかったという内容から、ドクターとの相性、治療費のこと、自分の思い描いた治療結果にならなかったなど、いろいろな内容のものがあります。一般的なワイヤーによる矯正治療とインビザライン治療では失敗になにか差があるのでしょうか?

“インビザライン、失敗”でネット検索してみると、治療が上手くいかなかったとの内容が大量にありました。実際にインビザライン治療はワイヤー治療に比べると失敗が多いのでしょうか?失敗については滅多に公に議論されないので実際のところは分かりませんが、インビザラインでの失敗について、私の感じていることを書いてみようと思います。

通常、治療を予定通りに良い結果を得られたという報告は学会などで多数発表があるため、我々矯正医も正しい治療方針については日常的に見慣れています。こうすれば治療が上手く進むという情報はもちろん重要で、それを模倣することで様々な治療方法が洗練されていくことになります。しかし、失敗には当然理由があり同じことを繰り返さないためには、本来は失敗こそ突き詰めて考える必要があります。
ただ、失敗は公の場に出てくることが少なくて、他人の失敗から学ぶことが難しいという側面があります。だからこそネットの世界でこのように失敗の情報があふれることになったのだろうと私は思っています。

インビザラインの失敗にはいろいろとありますが、最大の失敗にして大部分のウエイトを占めるのが、治療が想定通りに進まなかったことだと思います。歯並びの凸凹が取れるはずが改善しない、出っ歯が治らない、顔の形が治療後にも自分が希望した状態にならないなど、様々な失敗を挙げることができます。

治療計画からの軽度のズレはさておき、治療が全く想定通りに進まない最大の要因はドクターの技術・知識が不足していることから起こっているように思います。インビザラインはPCを用いて歯の移動シミュレーションを作製し、それに応じてマウスピースを製作します。患者さんはドクターから渡されるマウスピースを自分で着脱して治療を進めるので、歯科医院に行った際に受ける処置にはどこの医院でも通常は大きな差はありません。ですから患者さんにはドクターの技術差を判断するのは難しいと思います。

しかし、実際に歯を動かし始める前に、患者さんのマウスピースを設計する過程では、ドクターの知識や経験によりかなり大きな差が生じます。インビザライン治療でも、歯の移動様式はドクターが決定する必要があります。歯の移動様式を決定するためには矯正学的な知識が必要ですし、どのように移動させると治療がスムーズに進むかを判断するためにはかなりの経験が必要になります。どんなドクターも最初は知識を集め、その知識を活かしつつ患者さんの治療を行うことで少しずつ経験値を積んで治療が上手になっていきます。

また、歯の移動シミュレーションはPCを用いて製作するのですが、このソフトには計画した歯の移動が可能かどうかを評価する機能はありません。矯正治療の知識があれば到底不可能だと分かる移動でも一見正しいようにシミュレーション上では見えてしまいます。
そのシミュレーション上の移動が実現できるかどうかを評価する知識がなければ、実際に治療を行った際に予定通りに歯の移動が起こらないという問題が発生することになります。

クリンチェックシミュレーション

マウスピースを用いて歯を移動するという治療法は治療計画が正しく立てられていれば治療は予定通りに上手く進む可能性が高いと思います。理想的な治療計画を立てるのはかなりの知識と経験が要求されるため、誰がシミュレーションを製作しても同じものになると言うことは決してありません。
インビザライン治療は矯正医の立場から考えると通常のワイヤー治療よりも難易度がたかく、細心の注意が必要です。
実際に治療を受ける場合には、医院選択の基準にインビザラインの経験値がどの程度であるかを検討いただくのも治療を失敗しない方法の一つだと思います。

 

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院長 久保田 衛

  • 医療法人プライムオルソ 理事長
  • 日本矯正歯科学会 認定医
  • インビザライン公認クリニカルスピーカー
  • カンボジアプティサストラ大学臨床教授

医療法人プライムオルソ くぼた矯正歯科クリニック

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