インビザラインコラム

第15回 インビザランで計画通りに歯を移動するためにはどうすれば良い?

最近では多くの方が、「インビザラインは矯正装置のひとつでマウスピースを使用して歯を移動させる」ということをご存知のように思います。しかし、歯並びの相談で医院にお越しいただいた方にインビザライン治療の詳細を説明すると、「初めて歯並びが変化していく仕組みがわかった!」とおっしゃる方が大勢いらっしゃいます。インビザラインのことを書いているサイトはたくさんありますが、歯が動く仕組みまで書いているページは意外に少ないので、第2回コラム『マウスピース矯正(インビザライン)で歯はどうやって動くの?』に引き続きお話したいと思います。

 

Ⅰ.3次元的なゴールを設定し治療を進めます

歯科医院では矯正治療の診断の際に、治療後はどういう状態・歯並びになるのか(矯正医により方法は様々ですが)説明をいたします。インビザラインでは、歯をスキャンしたデータをもとにクリンチェックというソフトウェアを使用して、3次元的に歯の最終位置を決定し、PCの画面上で治療後の歯並びの状態を確認することができますので、患者様は治療結果のイメージをつかみやすいと思います。

2次元での治療ゴール設定図

(現時点ではレントゲン写真と整合性を整えて治療ゴールを設定することが難しいため、矯正医によってはクリンチェックによる治療計画では不十分だという方もいらっしゃいますが)このソフトでは歯の移動量の計測や歯の傾きの変化も計測することができ、従来の矯正治療では2次元で設定していた治療ゴールをより正確に設定することができます。

インビザラインでは第1段階として3次元的な治療ゴールを設定し、そのゴールに向かって治療を進めていくことになります。

クリンチェックシミュレーション

 

治療ゴールの設定が完了すると治療前後の移動量および移動方向が決まりますので、基本的にはできるだけ一直線に目的の位置に向かって歯が移動するようにそれぞれの歯の移動様式を決めていきます。第13回『矯正の治療期間を短くする方法はありますか?』のブログでも書きましたが、歯の移動様式を決定する際に何本の歯を同時に移動させるかで全体の移動に要する治療期間が変わってきますので、効率の良い移動様式に設定することが非常に重要です。

 

Ⅱ.マウスピースが歯を動かすメカニズム

すべての歯の移動様式が決まると、次のステップとして歯の移動を小分けにした治療計画をソフト(クリンチェック)を用いて作成します。通常、歯の移動を小分けした治療計画は、1回の移動で歯が0.25mm移動するように作成されます。要するに1本の歯が1mm移動するためには移動を4回に分けた治療計画を作ることになります。例えば歯を抜歯して矯正治療を行う場合、抜歯後には7〜8mmくらいのスペースが歯列にできますので、そのスペースを完全に隣の歯と接するように閉鎖するためには抜歯した歯の隣り合う歯がそれぞれ3〜4mm移動する必要があります。そのため抜歯スペースを閉鎖するための治療計画は12〜16回に分ける必要があるということになります。治療上難しい移動がある場合には1回の移動で0.25mm移動させることが望ましくない場合もあり、そのような移動に対しては歯の移動量を小さくしてより計画通りに歯の移動が進行するように調整します。

 

実際の矯正治療では、すべての歯を同時に移動させることは難しいため、移動させる順番を決め、移動できるタイミングになってからすべての歯の移動を終えるには、治療計画をかなりの数に分けることになります。もちろん治療前の状態によって治療計画の長さは異なりますが、先程の抜歯治療では平均的に70回以上に移動を分けることになります。

 

インビザラインでは、上記の治療計画1回に対して上下顎1組のマウスピースを用いて移動を行います。70回以上に分けた治療計画を立てた場合には、ほんの少しずつ形状の異なったマウスピースが70組以上メーカーから届くことになります。

マウスピース1個で歯を0..25mm移動させるように計画していますので、マウスピースを装着した直後は移動したい歯は0.25mmズレた状態で装着していることになります。マウスピースは弾力性がある透明に近い樹脂(プラスチックに近い材料)でできており、ある程度変形させることが可能なためマウスピースが歯並びから少しズレていてもほぼぴったり合った状態で口腔内に装着することができます。

使用を開始した直後のマウスピースでは、移動したい歯に対してマウスピースにピッタリあった位置に移動する力が加わることになります。歯に力が加わると従来のワイヤーによる矯正治療と同様に、歯は力が加わっている方向に向かって移動し始めます。マウスピースから発生した力による歯の移動はだいたい7日程度で完了します。

歯の移動が完了し歯並びとマウスピースが完全に適合するようになると、マウスピースから力が発生しなくなるためそれ以上歯は移動しません。歯並びと適合するようになったマウスピースは矯正装置としての役割を終えましたので、さらに歯の移動を進めるために次のマウスピースに移行します。次のマウスピースも前のマウスピースと同じく装着直後には0.25mmのズレがあり7日かけて歯の移動を行います。

 

上記の7日サイクルのマウスピースによる歯の移動により歯並びの状態が治療計画のどおりに少しずつ変化していくことになります。抜歯治療などの複雑な治療になると70回以上に分けた治療計画が立てられているため、70組以上のマウスピースを毎週交換しながら治療が進んでいくことになります。

マウスピースで歯を移動するとなると、“凸凹の状態のマウスピースが合わなくなるんじゃないか?”とか、“マウスピースが傷んできたらどうするのだろう?”など、様々な疑問をもたれる方も多いと思います。実際にはマウスピースを次々に交換することで歯並びが変化しますので、計画通りに治療が進めばマウスピースは歯並びと適合した状態で治療が進行しますし、7日程度でマウスピースが傷んで使えない状態になることはほとんどありません。

 

しかし、大抵の患者様では治療をすすめるうちに治療計画と歯の移動に少しずつ差が生じてきてマウスピースの適合が悪くなっていきます。マウスピースが歯並びに合っていなければ歯を計画通りに移動させることはできません。そのため、インビザラインによる治療ではしばしば追加アライナーといい、マウスピースを再制作し直すことで治療計画の練り直しを行います。追加アライナーについては、また別の回でお話したいと思います。

 

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院長 久保田 衛

  • 医療法人プライムオルソ 理事長
  • 日本矯正歯科学会 認定医
  • インビザライン公認クリニカルスピーカー
  • カンボジアプティサストラ大学臨床教授

医療法人プライムオルソ くぼた矯正歯科クリニック

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