インビザラインコラム

第27回 インビザライン後の歯並びの保定ってどうするの?

 インビザラインに限った話ではなく、矯正治療で歯を移動させると治療後に歯が元々の位置に戻ろうとする現象が発生します。この現象を歯の後戻りと言います。後戻りは矯正治療では例外なく必ず起こりますので、矯正治療が終わった後、後戻りを予防して歯が矯正治療後の位置で安定するようにしなければなりません。治療時の歯の移動量が大きければ大きいほど後戻りする量も大きくなるため、元々の状態がひどい凸凹だったり前歯の前突が強い出っ歯だったりした場合には、保定を行わないとあっという間にそれらの症状が再発することがあり注意が必要です。また、元の状態が軽いガタガタ程度だったら保定が必要ないかというと、そういう訳ではなくやはり凸凹が再発します。治療前の状態がひどくないのに矯正治療をされた方は、基本的に歯並びに対する意識が高い方が多いです。そういう方の場合、ほんの少し後戻りが起きただけでも気になるはずなので、やはり保定には気をつける必要があります。

 

 保定はどのように行うかといいますと、基本的に保定装置と呼ばれる歯並びを安定させるための装置を使用します。従来の矯正治療ではホーレーリテーナーと呼ばれる取り外し式の装置を使用していました。このリテーナーは歯の表側はワイヤーが歯の表面から接し、歯の裏側はプラスチックのプレートで歯を包み込むことで、歯が治療後の位置からずれないようにします。ホーレーリテーナーには若干のアレンジを加え表側のワイヤーの形態が異なったり、表側のワイヤーを目立たない別の材質に変えたものなど多くの変化バージョンがありますが、基本的には歯を安定させる作用機序はほぼ同じで、要するに歯の表側と裏側から歯をホールドすることできれいに並んだ歯並びを維持するわけです。保定装置は着脱が可能な装置を使用することが多いですが、歯の裏側に細いワイヤーを接着して凸凹が戻らないようにする保定の仕方もあります。歯にワイヤーを接着するタイプは着脱は必要がない反面、接着剤の劣化でワイヤーが脱離したり、場合によっては歯磨きがしにくいため虫歯や歯周病の原因になったりします。固定式と着脱式のどちらが良いかは患者様の希望と最初の状況によると思います。

 インビザラインで治療した患者様は目立たない装置を希望されることが多いので、上述したホーレーリテーナーは嫌がられることが多いです。通常はインビザライン治療に使用したのと同じような、マウスピースタイプのリテーナーを使用するのが一般的です。インビザライン社からビベラリテーナーという装置が提供されており、当院ではビベラリテーナーを使用することが多いですが、ビベラの他にも自院で製作するマウスピース型のリテーナーを使用することもあります。

簡単にビベラリテーナーの長所と短所を説明すると以下のようになります。

長所 ・治療用のアライナーとほぼ同じ形状で装置の感触に慣れていて使いやすい

   ・多少の後戻りを修正できる材質で作られている

   ・マウスピース型リテーナーの中では耐久性に優れている

短所 ・価格がやや高額

   ・製作に日数を要する

   ・歯並びの安定性が優れており咬合力で徐々に咬合させる方法には不向き

 ビベラリテーナーは多少後戻りした状態からでもリカバリーできる性質があり、保定装置としては非常に優れています。一方で、矯正治療では歯を動かす治療が終了したのちに咬合力で少しずつ咀嚼しやすい位置に歯が移動するのですが、ビベラ等のマウスピース型のリテーナーを使用すると咬合力で歯が移動することはありません。治療終了時によりしっかりと咬合している必要があり、治療の最終段階で非常に高い技術力が必要になります。

 

 リテーナーの使用方法も保定効果を高めるためには重要な要素です。リテーナーの使用法に厳密な決まりはありません。それが余計に保定を難しくしているのかもしれません。基本的にはなるべく毎日長時間を使用し、それを長期間に渡り継続するのが望ましいです。ですからインビザラインによる矯正治療が終了してからもビベラリテーナーを治療中と同様に一日中フルタイム使用するのが理想的です。しかし、その使用法では矯正治療が終わっていないとのまるで同じなので現実的にはフルタイム使用を長期間にわたり続けることは難しいと思います。私の医院では矯正治療終了後1年間はリテーナーをフルタイムで使用して頂き、1年経過し歯並びが安定した後に夜間就寝時の使用に変更しております。そうなると次の疑問は、就寝時の使用をいつまで続ければ良いかということだと思います。その疑問についても明確な答えはなく、ドクターそれぞれで考え方が異なるのが現実です。私の医院では最低3年、可能であれば半永久的に使用されることをお勧めしています。そのように患者様にお伝えすると驚かれると同時にがっかりされることがあるのですが、とにかくできる限り長期間にわたり使用されるのが理想的です。ちなみに長期保定に関する有名な論文があるのですが、その論文によると30年以上の長期にわたって歯の裏側にワイヤーを接着して保定した患者様の装置を外したところ、それでも後戻りが起こったとのことです。治療前の歯並びが患者様の体にとっては最も安定した位置であり、矯正治療で歯を移動させてもその位置に歯が馴染まない可能性が多分にあるということになります。

 

 矯正治療後の保定は、矯正治療で歯を移動させてきれいに並べるよりも難しいとも言われることがあります。矯正治療後の後戻りを気にされて相談にお越しになる患者様が来られることがあるのですが、特に保定は何も行わなかったとお聞きすることもあります。治療した歯科医の認識に問題があったのかそれとも患者様の勘違いなのかそこを置いておくとして、矯正治療後に保定は百パーセント必要です。面倒だと感じても矯正治療後は保定装置を必ず使用する必要があること覚えていれば後戻りの予防に役立つと思います。

院長 久保田 衛

  • 医療法人プライムオルソ 理事長
  • 日本矯正歯科学会 認定医
  • インビザライン公認クリニカルスピーカー
  • カンボジアプティサストラ大学臨床教授

医療法人プライムオルソ くぼた矯正歯科クリニック

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