インビザラインコラム

第17回 子どものインビザラインってちゃんと治りますか?

最近はお子様の矯正治療の相談で、できれば固定式のワイヤー装置を使いたくないとおっしゃる親御さんやお子様が多くいらっしゃいます。目立つ装置が嫌だからとか、痛そうだからとか、親御さんご自身がワイヤーで治療をして辛かったからとか、理由をお聞きすると様々です。固定式のワイヤー装置に抵抗を感じることについては、私自身ワイヤーが嫌でインビザラインで歯並びを治しただけに気持ちはよく分かります。たしかに昨今では大人だからとか子どもだからとか、年齢で区別する感覚自体がなくなってきたような気がします。

子どもの矯正治療をワイヤーじゃなく着脱できるインビザラインでできるようになったことは患者様にとっても矯正医の立場からも非常に有益なのですが、インビザラインで治療を行ってもしっかり治らないのであれば意味がありません。私の経験から、お子様の歯並びをインビザラインで治療することが可能なのか結論から申しますと、可能です。

数年前からインビザライン・ファーストという選択肢がメーカーから用意されました。これは乳歯と永久歯が混在している歯並び(混合歯列)を治すためのマウスピース装置です。インビザライン・ファーストは、子どもの矯正治療の「第1期治療」という顎骨に成長がある時期に矯正治療を行うための選択肢です。(第1期治療の詳細はまたいつかお話します)

ただ、混合歯列期に歯並びの相談に来られたすべての患者様にインビザライン・ファーストを勧めるかというと決してそういう訳ではありません。インビザライン・ファーストは、どのような状態であれば対応できるかが現時点では明確ではなく、そもそも第1期治療にはメリットもあればデメリットもあるからです。

 

混合歯列期(第1期治療)のメリット

  • 凸凹や出っ歯などの主訴を早い段階で改善することができる
  • あごの成長を利用して、骨格系の不調和も含めて改善が見込める
  • 歯が動く速さが成人より速く、治療期間が比較的短くて済む
  • あごの骨を拡げやすく、将来抜歯が必要になる可能性を下げることができる
  • 矯正治療後の歯並びが成人矯正に比べて安定しやすい
  • 歯並びがキレイになることで歯磨きがしやすくなり、予防的な効果も期待できる

 

上記を考慮すると混合歯列期の段階から治療を開始するメリットは大きく、インビザライン・ファーストで治療ができるようになり、矯正医の選択肢も大幅に広がったと私は考えています。以前なら矯正治療に抵抗があり永久歯になるまで何も治療を行わず成長待ちだったお子様でも、インビザライン・ファーストを用いることで混合歯列から矯正治療を開始しやすい環境が整いました。

 

 

混合歯列期(第1期治療)のデメリット

  • 顎骨の成長を考慮する必要があり成長終了後の状態を正確に予測するのが難しい
  • 未萌出の歯の大きさを予想する必要があり、不確定要素が多い
  • 治療中に歯の生え変わりが進み治療を終えるタイミングを逸することがある
  • 仕上げの治療を行えず中途半端な状態で治療が野放しになる可能性がある
  • 矯正治療後の保定が第1期治療の場合難しい
  • 患者様の協力を得るのが難しいことがある

 

上記のデメリットのうち最大の要因は、成長や歯の生え変わりによって起こる変化を正確に予想することが難しいということだと思います。混合歯列期の治療では最終的に永久歯をどのような歯並びにするのかを想定して治療のゴール設定を行うことになります。不確定な要素が多ければ多いほど判断が難しくなりますので、乳歯がたくさん残っている段階で矯正治療を行うと治療は難しくなります。

混合歯列期の矯正治療では上記のメリット・デメリットを秤にかけて、治療を行うメリットが明らかに大きい場合にのみ、その時期から矯正治療を開始するということになります。

 

私がインビザライン・ファーストを用いるかを検討する場合に考えることは…

①治療を開始した方が、患者様に明らかにメリットがあるかどうか。

インビザライン・ファーストでは基本的に歯が並ぶスペースを大きくしていくことで永久歯が生え変わりやすい状態に誘導していきます。

・理想的な歯並びを早期に獲得できる可能性が高い

・将来的に抜歯して矯正治療を行う必要がなくなると考えられる場合

などには、インビザライン・ファーストでの治療をお勧めしております。

 

②お子様が予定通りにマウスピースを使用することができるかどうか。

患者様が治療計画に沿ってマウスピースをしっかり使うことが出来ない場合には、計画どおりに治療を進めることは不可能です。お子様と親御様の協力を得られない限り治療は成功しません。当院ではインビザライン・ファーストの場合には、お子様ご自身が治療に対して前向きかを必ず確認し、やる気がある場合にのみ治療を開始することにしています。

 

実際にインビザラインファーストで治療を行った患者様の治療経過を簡単にみてみましょう。下の写真は治療を開始したときから治療が終了した約15ヶ月の変化がわかるように上下顎の写真を並べてみました。上下顎ともに、治療前の段階では犬歯の生え変わるスペースが不足しており歯並びの外側から犬歯が生え始め凸凹になり始めています。歯が生え変わるのに十分なスペースが不足しているためにこのような凸凹が発生しているため、この患者様の治療は上下の歯列を外側に拡大することで歯が並ぶスペースを作っています。写真でも徐々にVの形をしている歯列が広がっていき丸みを帯びてきているのが分かると思います。

歯列の拡大が十分に進んだ結果、犬歯の凸凹が解消され犬歯の後ろの4番目の歯も理想的な状態に生え変わっているのがみられます。まだ乳歯が残っており永久歯列が切れない状態になったわけではありませんが、この状態までもってくれば乳歯が脱落したあとで正しい位置に永久歯が生え変わる可能性がたかいため、約15ヶ月で第1期治療を終え、経過観察に入りました。

この患者様は骨格のバランスがとれており出っ歯や受け口の問題がないためインビザラインファーストで対応しやすい状態でした。すべての患者様で同じように単純に治療を進められるわけではありませんが、最初の診断で装置の選択がしっかりできればインビザラインでお子様の歯並びをしっかり改善することが出来ます。

 

            治療開始

            6ヶ月後

            9ヶ月後

     インビザラインファースト終了(15ヶ月)

 

インビザラインは矯正治療の装置としては比較的歴史が浅く、ワイヤー矯正と比較すると治療のノウハウがまだ豊富ではありません。そのため、お子様の矯正治療のように不確定要素が多い治療ではインビザライン・ファーストを治療の選択肢に入れるのを躊躇する矯正医が多いのも確かです。しかし、患者様の協力を得て計画通りに治療を進めることができれば、以前のワイヤー矯正の欠点を排して第1期治療の長所を享受できるため、患者様への利益はとても大きい治療装置です。

 

混合歯列期の治療は矯正医によって考え方に差があり、治療方針も様々です。それぞれの装置にメリット・デメリットがありますので、歯並びを治す場合には使用する装置にこだわるのではなく、まずは目指すべき治療ゴールが納得できるものであることに主眼を置かれることをお勧め致します。

院長 久保田 衛

  • 医療法人プライムオルソ 理事長
  • 日本矯正歯科学会 認定医
  • インビザライン公認クリニカルスピーカー
  • カンボジアプティサストラ大学臨床教授

医療法人プライムオルソ くぼた矯正歯科クリニック

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